離婚裁判

裁判離婚

裁判離婚

裁判離婚

協議離婚や調停離婚が成立しない場合、裁判離婚による離婚を検討する必要があります。

もっとも、裁判離婚には各種のメリット及びデメリットがあることから、当該メリット及びデメリットを考慮した上で協議離婚や調停離婚の成立可能性を検討し、それでも協議離婚や調停離婚が成立しない場合に裁判離婚を検討することが重要です。

本ページでは、裁判離婚の内容や特徴、進め方について解説いたします。

1 裁判離婚とは

1.1 裁判離婚

協議離婚が成立せず、かつ調停でも離婚が成立しないという場合には、残る3種類の方式の離婚(和解離婚、認諾離婚、裁判離婚)を検討する必要がありますが、上記3種類の方式で離婚するには、まず離婚裁判を提起する必要があります。

離婚裁判では、法律上定められた離婚原因(民法第770条)の有無等が判断され、離婚原因が存在すると認められた場合には基本的に離婚請求が認容され、裁判離婚が成立します(厳密には判決が確定したときに離婚が成立します。)。

なお、離婚裁判の中で附帯して、①子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分(養育費、面会交流、監護者の指定、子の引渡しなど)、②財産分与に関する処分、③年金分割に関する処分(人事訴訟法第32条)についての裁判を求めることも可能です。

また、離婚裁判の請求原因である事実によって生じた損害賠償請求は、離婚裁判と併せて訴訟提起することが可能であるため、離婚裁判の中で一回的な解決を図ることが可能です(人事訴訟法第17条第1項)。

附帯処分の申立てを行っても裁判所が判断しないことがある?

最二小判令和4年12月26日民集76巻7号1948頁は、離婚裁判に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするにあたり当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されない旨を判断しました。

これはあくまで財産分与に関する附帯処分の申立てがあった事案に関する判断ですが、人事訴訟法第17条第1項の規定内容や上記判例の判断内容を前提にすると、財産分与以外の附帯処分の申立てがあった場合でも、裁判所は離婚請求を認容する判決を出す際には申立てのあった附帯処分に対する判断を行う必要がある可能性があります。

離婚裁判の裁判管轄

離婚裁判の管轄裁判所は夫婦の住所(住所がないときなどは居所、最後の住所)を管轄する家庭裁判所です(人事訴訟法第4条第1項)。

通常、離婚を請求する当事者が自身の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚裁判を提起することになりますが、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者の衡平を図るために必要があるときには他の管轄裁判所に移送されることがあります(人事訴訟法第7条)。

とくに、未成年の子がいるときには、その子の住所又は居所を考慮しなければならない(人事訴訟法第31条)とされているところ、離婚を請求された側が子供と一緒に生活している場合には請求された側の住所地を管轄する家庭裁判所への移送が認められる可能性があります。

1.2 和解離婚

和解離婚とは、離婚裁判の中で訴訟上の和解を成立させることにより成立する離婚(人事訴訟法第37条第1項)をいいます。
裁判所の判決により離婚が成立する裁判離婚よりも離婚条件を柔軟に調整できる点でメリットがあるため、和解離婚は多く利用されています。

※2020年の離婚件数のうち和解離婚は2545件(1.3%)、認諾離婚は2件(0.001%)、裁判離婚は1740件(0.9%)となっています(厚生労働省「令和4年度離婚に関する統計の概況」)。

1.3 認諾離婚

認諾離婚とは、離婚を請求された当事者が請求の認諾をすることにより成立する離婚をいいます(人事訴訟法第37条第1項、民事訴訟法第266条第1項)。

なお、和解離婚の場合とは異なり、附帯処分の申立て(人事訴訟法第32条第1項)がなされている場合や親権者の指定(同条第3項)を行う必要がある場合には認諾離婚をすることはできません(人事訴訟法第37条)。

2 調停離婚の特徴

2.1 夫婦間の合意がなくても離婚が成立する

裁判の中で離婚原因が存在すると判断された場合には基本的に離婚請求が認容され離婚が成立するところ、離婚裁判には、協議離婚や調停離婚とは異なり夫婦間の合意がない場合でも離婚が成立するという特徴があります。

そのため、裁判離婚は、配偶者が頑なに離婚を拒否しているという場合でも離婚を成立させられる可能性があります。

2.2 裁判提起後でも和解離婚による柔軟な解決が可能

裁判手続を進める中で裁判所から和解案が提示されることがあります。
通常、上記和解案は裁判所の判決見通しを前提としており当事者としても納得しやすいことから、協議離婚や調停離婚が成立しなかった場合でも和解で離婚が成立することが少なくありません。

裁判の中で和解離婚を成立させる場合、当事者双方が和解案に対する意見を述べることが可能であることから、判決が確定することにより成立する裁判離婚よりも柔軟な条件で解決できる可能性があります。

2.3 裁判所が関与することにより一定の公正さが担保される

裁判離婚は、裁判所が手続に関与することから、解決内容に一定の公正さが担保されているといえます。

とくに裁判所が判決を出す場合、証拠に基づきした認定した事実を前提とした裁判所の判断が示されるため、当事者としては解決内容に納得感を得られることが少なくありません。

2.4 解決までに時間がかかることが多い

裁判離婚をするためにはまず離婚調停を行う必要があります((家事事件手続法第257条第1項))。

離婚調停は、調停の申立てから初回期日までに約1か月前後の期間が空く上、2回目以降の期日についても約1~2か月程度に1回という頻度で開かれるというのが通常であるため手続終了までに少なくない時間を要します。

そして、離婚調停終了後に離婚裁判を提起することになりますが、離婚裁判も離婚調停と同様の頻度で期日が開かれるため、手続終了までにさらに時間が必要です。

そのため、裁判離婚をするためには時間がかかることが多いという点が大きなデメリットとして存在します。

3 裁判離婚の進め方

協議離婚や調停離婚が成立しない場合、離婚を成立させるためには離婚の裁判を提起するほかありません。

しかし、裁判離婚には解決までに時間がかかることが多い(2.4)という大きなデメリットがあるところ、上記デメリットへの対策が重要です。

具体的には、①あらかじめ裁判離婚の可否に関する法的な見通しを適切に把握しておく、②離婚原因が存在する場合には離婚調停を速やかに不成立にした上で離婚裁判を提起することを検討する、③各訴訟期日の中で争点や準備事項、進行に関する意見等を明示することで、訴訟手続が可能な限りスムーズに進むように積極的に段取りを取るなどが考えられます。