危険行為を働いた夫と接触することなく離婚できたKさんの事例

離婚の成立に関する事例

離婚の成立に関する事例

危険行為を働いた夫と接触することなく離婚できたKさんの事例

ご相談者Kさん

当事者:離婚を請求した
性別:女性
職業:パートタイマー

相手職業:自営業
解決方法:調停

※案件や依頼者様の特定ができないように内容を編集しております。

状況

ある日、Kさんは夫の様子がおかしいと感じ、調査会社へ不倫の調査を依頼しました。

調査の結果、Kさんが家族ぐるみで付き合っていた女性と夫が不倫している事実が判明しました。
この事実にショックを受けたKさんは、夫に直接問いただした後、二人の子供を連れて実家へ帰ることにしました。

Kさんが実家へ戻って間もなく、夫が実家へ訪ねてきたのですが、Kさんは怒りが収まらず夫に対し自宅へ帰るよう伝えました。
すると、これに激昂した夫は、Kさんの実家の窓ガラスを破壊して中に進入した上、物を破壊するなどの行為に及びました。

その後、警察が現場へ駆けつけ、夫は逮捕されました。
その際に、警察から、「今後の夫とのやり取りは弁護士を通して行うように。」との指導があったため、Kさんは離婚を含めたその後の対応について弁護士に依頼することにしました。

Kさんは、依頼した弁護士との間で離婚調停の申立てを行う方針に決めたのですが、その弁護士から数か月間連絡がなく、弁護士に状況確認の連絡をしても連絡がつかないという状況が続きました。そこで、対応に困ったKさんは、離婚調停の申立てや夫への対応等を当事務所の弁護士にご依頼されました。

弁護士の活動

1 接触禁止を求める対応

まず、弁護士は、夫へ内容証明郵便を送付し、Kさんには一切接触しないことを強く求めた上、今後の連絡は全て弁護士宛に行うように伝えました。

また、あわせて弁護士は、夫に対し、Kさんから弁護士が依頼を受けたこと、婚姻費用を請求すること、近日中に離婚調停及び婚姻費用分担調停を申し立てることを説明しました。

そのほか、万が一の場合に備え、Kさんに最寄りの警察署の生活安全課に行っていただき110番登録を行ってもらうこととしました。

2 離婚調停

通常、まずは協議離婚の代理交渉から開始し、協議離婚の成立見込みがない場合などに離婚調停を申し立てるというのが一般的です。

しかし、本件については弁護士が依頼をお受けする前の状況に照らし協議離婚が成立する可能性が極めて乏しかったこと、またKさんが離婚調停での解決を強く希望していたことから本件ではご依頼いただいた後すぐに離婚調停を申し立てる方針としました。

そして、実際にKさんからご依頼いただいてから約1週間後に離婚調停及び婚姻費用分担調停の申立てを行いました。

3 合意した離婚条件

別居後の経緯もあり、Kさんは離婚成立後に夫と一切接触しなくて済むような解決を希望していました。
そこで、離婚後に養育費のやり取り等を行わなくて済むように、弁護士は、調停の中で、夫に対して二人の子供が大学卒業するまでの養育費を一括払いで支払うこと及び不倫や危険行為に関する慰謝料と不倫の調査費用を支払うことなどを求めました。

これに対し、夫は養育費の終期や支払方法(毎月払い、一括払い)、慰謝料の金額や調査費用の支払義務などについて争ってきたのですが、弁護士は「夫の不倫及び夫が行った危険行為がもっぱら離婚の原因であること」、「Kさんと夫は、警察から互いに接触しないように警告されている状況であること」、「別居後の経緯や警察からの警告内容に照らすと、離婚後にKさんが夫とのやり取りを行った上で養育費の請求を行うことは現実的ではないこと」、「夫の不倫は、その長さや態様等につき極めて悪質と評価されるべきであること」などを繰り返し主張しました。

その結果、最終的に「夫は、Kさんに対し、二人の子供の大学卒業までの養育費を一括で支払うほか、慰謝料300万円と調査費用40万円を支払う。」との内容で調停を成立させることができました。

なお、不倫相手の女性に対しては別途慰謝料を請求し、一定額の慰謝料を獲得することができました。

ポイント

1 配偶者との接触回避のために取りうる手段

離婚の話合いに前後して配偶者が危険行為を働いてくる場合、まずは身の安全を図ることが何よりも重要です。

そのため、状況に応じて、①弁護士から配偶者に対し警告書面を送付する、②警察に相談に行ったうえで110番通報登録を行う、③保護命令の申立てを行うなどの方法を検討する必要があります。

本件では、夫は逮捕された後に警察に対してKさんと接触しない旨の約束をしたこと、実際に夫はKさんに対しその後接触しなかったこと、弁護士が依頼をお受けした時点で夫が危険行為を働いてから一定期間が経過していたことから、本件では③配偶者保護命令の申立てまでは行わず、①弁護士からの警告書面の送付、②110番通報登録を行うという対応を行いました。

上記のうちいずれの対応を取るべきかという判断は、具体的な状況や配偶者による暴力行為の危険性の高さ等を踏まえ慎重に検討する必要があるため、判断に迷う場合には弁護士に相談されることをお勧めいたします。

※110番通報者登録制度については、長崎県警察のWebサイトもご確認ください。

2 離婚問題と配偶者との接触の要否

(1)協議離婚
夫婦間の話合いで協議離婚を成立させようとする場合には基本的に夫婦間での接触が避けられません。

もっとも、弁護士を通じて協議離婚の代理交渉を行う場合には、相手方配偶者との間のやり取りは弁護士がすべて行うことから配偶者と接触する必要はありません。


(2)離婚調停
離婚調停では、調停委員に話をすることになるため配偶者と対面する機会は基本的にはありません(調停成立時に配偶者との同席の可否を尋ねられることもありますが、同席が難しい旨の回答を行えば同席は求められないのが通常です。)。

また、配偶者による暴力行為が現実的に想定される場合には、あらかじめ家庭裁判所にその旨を伝えておくことで偶然に配偶者と遭遇するリスクへの対応を行ってもらうことが可能です。

なお、弁護士が委任を受けて離婚調停に対応する場合は、審判離婚により当事者ご本人が家庭裁判所に出頭しない状態で離婚を成立させることも少なくありません。

※審判離婚については、詳しくはこちらをご覧ください。


(3)離婚裁判
離婚裁判については弁護士に対応を委任することがほとんどだと考えられますが、その場合、弁護士が裁判に対応することになります。
そのため、離婚裁判の中で夫婦が対面する機会というのはほとんどありません。

もっとも、最終的に和解が成立せずに裁判所が判決を出すという場合には基本的に夫婦について尋問手続を行う必要があるのですが、尋問手続においては、夫婦が同じ空間に滞在する必要が出てきます。

尋問手続は双方の弁護士や裁判官などが同席するため配偶者が危険な行為に及ぶ可能性は低いと考えられますが、相手方配偶者に対する恐怖心が強い場合には遮へい措置をとってもらうことで相手方配偶者の顔を見ることなく尋問手続を終了させることができる場合もあります。


(4)本件の場合
本件ではKさんも離婚調停の期日に出席したのですが、家庭裁判所に特別の配慮を求めたことで、調停手続中にKさんと夫が接触する可能性が全くない状況で離婚を成立させることができました。

3 養育費の一括払い

養育費については、毎月ごとに具体的な養育費の請求権が発生するところ、毎月払いというのが通常です。

もっとも、離婚後に配偶者が養育費を支払わないことが懸念される場合や離婚後に養育費のやり取りを行うことが困難な場合には養育費の一括払いの合意を行うことがあります。

本件では、離婚後にKさんが夫に対し養育費の請求等を行うのが難しい状況であったことから離婚時に養育費を一括で支払ってもらうことを求め、最終的に養育費の一括払いの合意ができました。

※養育費の一括払いのメリット及びデメリット等については「こちら」のページをご覧ください。

4 不倫の調査費用の請求

不倫の調査費用が損害として認められるかどうかは裁判所の判断が分かれうるところです。
そのため、協議離婚の代理交渉の段階では不倫の調査費用を請求することは必ずしも多くはありません。

もっとも、慰謝料請求の裁判を行う場合や離婚調停の申し立てを行う場合などには、調査費用の請求を行っておくことで調査費用を獲得できる可能性もあることから、法的見通しのみではなく交渉上、戦略上の観点から調査費用の請求を行うかどうかの検討を行っておくことが重要です。

※不倫の調査費用(探偵会社・興信所の費用)を相手方に請求できるかどうかについては、詳しくは「こちら」のページをご覧ください。


※掲載中の解決事例は、当事務所で御依頼をお受けした事例及び当事務所に所属する弁護士が過去に取り扱った事例となります。