状況
Uさんの夫は、Uさんと結婚してしばらくすると「離婚したい。」と言ってくるようになりました。
Uさんが理由を尋ねても夫はただ「離婚したい。」と繰り返すのみで、離婚したい理由を答えませんでした。
その後、夫の様子を訝しく思ったUさんが調べたところ、夫は女性の家で頻繁に寝泊まりしており、その女性と不倫関係にあることが分かりました。
不倫した上で一方的に離婚を求めるという夫の身勝手な言動に強い憤りを感じたUさんは、当事務所の弁護士に不倫相手の女性に対する慰謝料請求や夫からの離婚請求への対応についてご依頼されました。
弁護士の活動
1 不倫相手の女性への慰謝料請求
まず、弁護士は、不倫相手の女性へ電話した上、弁護士が送付する受任通知等の送付先住所を指定するよう求めました。
その後、弁護士は、女性が指定してきた住所へ受任通知等を送付して慰謝料に関する話合いを進めました。
そして、最終的に女性がUさんに対し慰謝料として200万円を支払うとの内容で合意を成立させました。
2 夫との交渉
女性から慰謝料200万円を獲得した後、Uさんは、婚姻費用を請求するとともに扶養的財産分与として200万円を支払うのであれば離婚に応じるとの内容の離婚条件を提示しました。
その後、交渉を行った結果、最終的にUさんは夫から最終的に扶養的財産分与として200万円を獲得することができました。
ポイント
1 相手の事情にも配慮する
配偶者に不倫された場合、不倫相手のことを許せない気持ちは極めて強いはずです。
夫婦の関係性を壊されたのですから、それは当然のことです。
しかし、不倫相手への怒りのままに慰謝料を請求したり第三者に口外したりすると、相手方も攻撃的になり話合いでの解決が困難になることがあります。
さらに、第三者に口外した行為などが名誉毀損やプライバシー侵害に当たるとして、むしろ加害者になってしまうリスクもあります。
そこで、不倫相手に慰謝料を請求する場合には、いったん落ち着いて動くことが重要です。
また、相手方に対し攻撃的に対応すると相手方も攻撃的になる可能性が高いところ、攻撃的な相手方との話合いは難航することが多く、合意できる慰謝料額もより少なくなる傾向にあります。
そのため、不倫相手からできる限り多くの慰謝料の獲得を目指すという場合には、相手の事情にも配慮した上で冷静に交渉することが大切です。
相手の事情に配慮する一環として、受任通知を送付する住所を相手に確認することを検討すべきです。
不倫問題はプライバシー性が高いため、相手も情報の取り扱いには慎重であり、できる限りコントロールしたいと考えていることが少なくありません。
そこで、情報の伝わり方について相手に配慮することで双方冷静な状態で慰謝料に関する交渉を進めることが可能となり、結果として慰謝料の金額や支払方法についても納得のいく解決につながりやすくなります。
2 不倫相手と夫の両方から慰謝料を獲得できるか?
不倫は、法律上、共同不法行為(民法第719条第1項)にあたります。
その結果、不倫をした当事者(配偶者と不倫相手)は、被害者(不倫された配偶者)に対し、連帯して慰謝料などの損害を賠償する義務を負うことになります。
連帯して損害を賠償するということは、不倫を行った当事者の一方が損害を全て賠償した場合、他方当事者が被害者へ損害を賠償する義務は消滅することを意味します。
そのため、被害者は、配偶者のみに対して慰謝料請求をした場合も、不倫相手のみに対して慰謝料請求をした場合も、配偶者と不倫相手の両方に対して慰謝料請求した場合も法律上は獲得できる慰謝料の総額は同じということになります。
3 扶養的財産分与
財産分与は、一般的に夫婦共有財産を清算する清算的財産分与、慰謝料としての性質を有する慰謝料的財産分与、離婚後の扶養を目的とする扶養的財産分与の3つを内容としていると考えられています。
このうち扶養的財産分与は、裁判手続になった場合に裁判所の審判や判決で認められることは多くはありません。
もっとも、夫婦間の収入に差があるため離婚すると離婚後の生活不安が大きいという場合や、相手方が早期解決を希望している場合などには扶養的財産分与の合意を成立させられることがあります。
そのため、状況を見極めた上、必要に応じて扶養的財産分与の請求を検討することが重要です。
※扶養的財産分与を含む財産分与については、詳しくは「こちら」をご覧ください。
※掲載中の解決事例は、当事務所で御依頼をお受けした事例及び当事務所に所属する弁護士が過去に取り扱った事例となります。